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公立文化施設のアウトリーチ/世田谷区立世田谷文学館学芸課 尾崎秀甫

世田谷文学館は1994年に開館した東京23区初の総合文学館である。開館当初から「ジャンルの枠に捉われない文学館」として、小説家、詩人のほか絵本作家、音楽家や漫画家などを取り上げた、従来の文学館にはない企画展を実施してきた。
 また、現役の作家を講師に招いての連続講座や朗読会など、広く文学に親しんでもらうための普及活動も数多く行い、その中には館外で実施するアウトリーチも含まれる。
 99年より、『クマのプーさん』や『赤毛のアン』など世界の名作文学をテーマにした写真パネルを区内小中学校を中心に出張展示し、12年の間、学校の廊下や図書室など、毎日使う日常の空間で多くの子供たちへ文学との出会いの場を作ってきた。
 長年継続し、一部の学校では毎年恒例となっている出張展示だが、「展示」の形では写真パネルを「鑑賞する」という受動的な活動の域を出ることは出来ない。もっと自分の体験を通して文学に触れる機会が必要なのではないだろうか。しかし、いきなり詩や文章を書くような創作の講座では、ハードルが高すぎる。
 この問題に直面した時に立ち返ったのは、「ジャンルの枠に捉われない」という開館当初からの基本理念だった。
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