五輪組織委員会/ガバナンス改革案を決定/危機監理責任者を新設/旧エンブレム選定に「不正」 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は18日の理事会で、大会準備フェーズの変化と組織拡大を見据えた組織運営改革を決定した。ガバナンス改革では、事務総長や副事務総長、全局長で構成する「経営会議」を設置し、意思決定プロセスを明確化。副事務総長を3人体制とし、担当業務を明確化することなども盛り込んだ。いずれもオープンで透明性の高い組織運営と組織の垣根を超えた検討・相互牽制(けんせい)が目的。仮設競技会場について設計内容の妥当性・透明性を確保するため、アドバイザリー委員会も設置する。 新任の副事務総長はUDトラックス(株)元社長の坂上優介氏。3人の副事務総長の業務は、布村幸彦氏が大会計画・競技計画と運営など、佐藤広氏が総務・人事、広報・エンゲージメント戦略など、新任の坂上氏は企画調整・財政とマーケティング戦略などをそれぞれ担当する。 また、組織委員会の危機管理監とも言える「チーフセキュリティ・オフィサー」を新設し、元警視総監、元内閣危機管理官の米村敏朗氏を起用する。安全・テロ対策、サイバーセキュリティー対策に関する業務を統括する。 主な組織改編では、大会計画や輸送・宿泊を担う大会準備運営局を第一局、第二局に分割する。業務範囲の適正化と意思決定の迅速化を図るため。また、総務局の監査課を事務総長直轄の「監査室」に、法務課も法務部にそれぞれ格上げし、経営会議で議案の内容をチェックさせる。そのほか、理事会を今までの年4回から6回以上開催し、よりタイムリーで丁寧に議論する方針も決めた。 組織委ではエンブレムの白紙撤回を機に、豊田章男トヨタ自動車社長を座長とするチームが組織改革に着手。課題の「見える化」による工程改善に取り組むこととした。武藤敏郎事務総長は「リアルタイムで問題が可視化され、仕事の納期が強く認識されるようになってきた。改善のサイクルが回るように努めたい」と述べ、事務総長直轄の「改革推進室」を設け、取り組みを各局に広げる考えを示した。 ■「隠れシード」 組織委はまた、旧エンブレムの選考過程について調査報告書をまとめた。10月以降、元東京地検検事の和田衛弁護士ら4人で作る「外部有識者チーム」が延べ27人をヒアリングしていた。 旧エンブレム選考では、特定のデザイナー8人に事前に参加要請文を送付したことが分かっているが、審査委員代表の永井一正氏が槙英俊マーケティング局長と高崎卓馬クリエイティブディレクター(いずれも当時)に、全8人が自動的に2次審査に進めるよう要望したことが判明。1次審査で2作品が落選しそうになると、槙、高崎の両氏が永井氏に耳打ちし、追加で投票させて2次審査に進めさせたという。2次審査以降は不正が確認できず、佐野研二郎氏の当選に影響はなかったとしている。 調査チームは「追加で投票させた行為は『隠れシード』で明らかな不正」と批判。「手続きの公正さを軽視しコンプライアンスに目をつぶる、なりふり構わぬ働きぶりは現代の組織委には全くそぐわない」とし、新エンブレム選定では「胸を張れる作品を公正に選ぶことが求められる」と注文を付けた。
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