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都道路整備保全公社特集/道路の「安全・安心」の確保に向けて(本文掲載)

 日々の生活において、「衣食住」に加え「交通」が欠かせない要素として認知されることが多くなってきているが、「交通」の要となっているのが道路施設である。ところが道路施設の中でも橋は、高齢化や耐震性など多くの課題を抱えていることから「安全性」が危惧され、多くの人々から永続的に「安全・安心」を確保することが求められている。これら道路施設が抱える種々な課題を解決するために機能し、多くの管理者を強力にサポートする役割を果たすのが東京都道路整備保全公社である。


■高齢化する橋を点検
 2009年6月の区市町村実態調査結果によると、都内の区市町村が管理をしている橋梁の( きょうりょう )うち、100メートルを超える橋が1・5%の60、100メートル未満15メートル以上の橋が26・4%の1025、15メートル未満が71・2%の2768で、規模不明の橋を含めると総数は3886となっている。
 現在使用している橋は多くの人々の生活を支えていることから、常に健康な状態に保つことが求められ、定期的に点検することが必要となる。人に例えると定期検診にあたり、メンテナンスの基礎となるが、適切な頻度で点検を行うことで異なった環境や荷重状態で使用している個別の橋の健康状態を正しく把握することが可能となる。
 しかし、これら橋梁の安全性を保つために行われる点検を定期的に行っている自治体は、62団体中35・5%の22団体、点検を行うためのマニュアルとも言える「点検の要領」のある団体は19・4%の12団体となっている。
 また、人の病歴や発症に対する処置状況を記録する重要な役割を果たす「カルテ」と同様な機能を持つ「橋梁台帳」の整備状況は、52団体の83・9%とかなり高い整備率となっているように思われるが、点検や健全度診断の結果に関する記載となると、28団体で45・2%と低い整備状況となっている。
 一方、橋梁の健康状態を診断し、その時々の健康状態に対応した処方箋(せん)を記入し、処置方法を決定する「ホームドクター」の責務を担う土木技術職員数は、62市区町村で2901人と多く感じられるかもしれないが、職員総数7万4017人の3・9%、橋梁の専門技術者となると421人の0・6%と、少人数で業務を行っている実態が明らかとなる。
 これまでは、橋を新たに造ったり機能の足りない橋を架け替えるなど、街路や河川の整備にあわせて新たな橋に架け替えることで橋の安全性を保ってきたが、近年は、街路や河川事業が一定の整備に達したことから機能不足による架け替えが減少し、代わりに高齢化する橋が急速に増加してきている。高齢化する橋を通行止めや崩落から回避するために役立つのが道路アセットマネジメント支援事業である。
■公社の新たな取り組み
 公社の行っている新たな取り組みとは、先に説明した課題の解決に役立つ道路アセットマネジメント支援事業である。同事業は、点検と健全度診断、データベースシステム及びアセットマネジメントシステムの運用、中長期予防保全計画の策定、専門技術者の育成、相談窓口の開設、そして住民との協働で行う管理を進める「ブリッジサポーター制度」の推進の六つとなっている。
 第一の点検と健全度診断は、橋を知り尽くした専門技術者が最新の知見と豊かな経験を生かして業務に当たり、技術者の不足や技術力の低下を原因とする損傷等の見逃しや見過ごしを発生させない種々な支援を行うのが目的である。
 第二のデータベースシステム及びアセットマネジメントシステムの運用は、昨年度に最先端のICT技術による「橋梁アセットマネジメントシステム」構築を完了し、稼働開始したシステムをベースに行う業務である。これまでの紙ベースのデータを永久保存できるだけでなく、これまで困難だった橋の劣化予測や異なった財政規模、住民要望に応えるプランを短時間で策定し、「ユビキタス社会」にも対応が可能となる。
 第三の中長期予防保全計画の策定は、これまで数多くの計画を策定し、実施してきた経験を基に、自治体の実態に適した最適な計画を提案する事業である。
 第四の専門技術者の育成は、少子高齢化社会や小さな組織を目指す現状の自治体技術職員のスキルアップを行う業務である。技術職員の不足や技術力の不足は全国的な課題だが、技術の拠点を目指す当公社がそれら課題解決を図っていく。
 第五は、自治体の技術的悩みを受け付けてリアルタイムで答える「技術よろず相談窓口」の開設である。橋の保全だけでなく新たな橋づくりや架け替えにおける種々な問題や不明な点について、多くの事例を参考に適切なアドバイスを行っている。
 第六の「ブリッジサポーター」制度は、長崎県の「橋守り補助員」や岐阜県の「メンテナンスサポーター」と同様に都内の多くの橋を都民の方々と協働で管理していく制度である。昨年度は、6人がサポーターとしてボランティア活動に従事することを了承され、現在本格活動に向け準備中である。
 以上、いずれもこれからの都内の交通ネットワーク機能をサスティナブルに保持し、「安全・安心」な交通社会を築くために必要不可欠であるが、これら困難な業務を適切に果たし、公益財団法人として十分に機能することを目標に行っている。
 道路施設の保全・運用において、少子高齢化社会に対応し、厳しい財政状況において最小の経費で最大の効果を上げ、職員の負担を軽減するためには都内の区市町村の方々が道路アセットマネジメント支援事業に積極的に参画されることが望ましい。


東京都道路整備保全公社の道路部門の事業分野は、「道路の早期整備への貢献」「道路施設等の安全・安心な管理の推進」「都民とともに進めるみちづくり支援」と幅広い。
 ここでは、多種にわたる道路行政補完事業の中から道路部みちづくり推進課が、総力を挙げて展開している無電柱化推進事業を紹介する。
 無電柱化とは、地上の電柱(2007年時点の都内の本数は、95万本に及ぶ)や、それに架かる上空の輻(ふく)輳(そう)した電線類を地下の空間に収容し、道路上から電柱や電線類を撤去する事業である。
 電柱は戦後から高度成長期の電力需要の急増に対応した施設であり、当時は経済産業優先の時代で、乱立というイメージはなかった。その結果、歩行者や車椅子の通行阻害、都市景観へのバリア、震災など災害時の電柱倒壊による救急活動・物資輸送への大きな支障等、近年、成熟都市から新たな都市再生への転換が求められる中で、無電柱化は喫緊の課題として浮上した。
 「安心・安全」なまちづくりに応える無電柱化の事業効果として、都市防災機能の向上、安全で快適な歩行空間の確保、都市景観の向上、新たな情報基盤の確立、観光振興・地域の活性化が挙げられる。都市の再生に向けた都の無電柱化の取り組み、それに対応する公社の事業協力と、区市町村への技術支援について紹介する。
■都道の整備方針と公社の事業協力
 都は1986年度、電線類地中化計画をスタートさせ、これまで数次計画により計画的に都道の無電柱化を図ってきた。2010年度末現在の都道の地中化率は、区部で45%、多摩地域11%、都全体では30%と発表している。
 06年12月に策定された「10年後の東京~東京が変わる」において都心にある山手通りと荒川に囲まれたゾーンをセンターコアエリアとし、エリア内の対象都道130キロメートルを15年度までに整備するとしている。
 公社は、都の外郭団体、道路行政の補完機関として、07年度より、うち43路線、70キロメートルを受託し、現在、10カ年計画の折り返し・追い込み時期を迎え、目標年度達成に向け、組織を挙げて事業に取り組んでいる。
■区市町村への技術支援
 05年3月に都から区市町村への技術支援の要請を受けた。▽無電柱化事業促進に向けた各種協議会等への開催協力▽無電柱化に関する相談窓口▽事業実施に係る技術支援(業務代行)の3点である。
 区市町村においては、それぞれ地域特性があり、魅力ある街並み創出、観光振興・地域の活性化、交通安全とバリアフリーの向上等、地域再生の意向が異なる。
 技術支援は、06年12月から6区3市の業務代行を実施してきており、今年度は5区2市と施行協定を結び、16路線、約11キロメートルについて事業を代行している。
 区市への技術支援の実績として、区部の「地域のまちづくりプランのモデル事業」では、歴史的施設と一体性を持ったみちづくり、多摩部では、「みちづくり・まちづくりパートナー事業」において無電柱化に合わせた都市防災機能と景観の向上に技術支援を行った。
■技術支援の内容
 公社の標準的な無電柱化事業行程は、(1)計画策定(2)調査・予備設計(3)詳細設計(4)支障移設(5)電線共同溝本体工事(6)連系管・引き込み管工事(7)道路復旧(修景)─の流れとなる。路線指定、整備計画策定、電線管理者・交通管理者・地元との事前事後調整、建設負担金手続き、移設補償手続き等がこれに加わる。
 その一つ、電線管理者等との調整業務を紹介すると、▽電線共同溝入溝希望者との調整▽支障物件移設や工事工程調整▽交通管理者との線形協議▽地上機器(電力の変圧器などを収容するボックス)、地域住民との各引き込み位置の協議▽全般の協議管理─と多種に及ぶ。
 これら業務代行を一括して受託することで連続行程が可能となり、事業全般のコスト縮減、事務業務の簡素化、事業スパンの短縮を図ることが可能となる。
■無電柱化促進に向けて
 現道内の無電柱化事業は、歩道幅員が2・5メートルに満たない道路や、交通量が多く歩車道が分離されていない狭小道路等に対応できる地上機器の設置、輻輳する各種地下埋設物の移設、街路樹の防護・復元等がある。さらに官民境界の再現、バリアフリーの実現に向けた既存断面の高低差の解消など、求められる技術力は多種にわたる。
 公社のみちづくり・無電柱化事業の執行体制は、現役時代に多くのノウハウを蓄積した都のOB技術職員と、難易度の高い設計作業に精通した設計コンサル経験者の固有職員で構成されたプロ集団と自負している。
 「都市防災機能の向上」は、今般の東日本大震災を機に大きく注目を浴びており、今後の都市再生を進めていく上で欠かせないメニューの一つと考える。
 公社は、都の補完機関として、区市町村の技術支援機関として、今後とも組織を挙げて無電柱化事業の促進に貢献していく方針である。



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