| 新・橋を透して見える風景(13)/勝鬨橋を上げた男/戦前の橋梁技術の最高峰 1941(昭和16)年冬。その家族は、東京から朝鮮の京城へ引っ越す前にぜひ家族で訪れたい場所があるとの父親の声に押され、築地の隅田川畔に出かけた。男と妻と娘の3人。そこには昨年開通したばかりの勝鬨橋(かちどきばし)という大きな橋が架かっていた。
男はゆっくりと橋へと歩を進め、妻と娘もそれに続いた。橋の中央まで行くと男はひざが汚れるのも構わず片ひざをつき、橋桁と橋桁の継ぎ目をめでるようになでた。
「ここはエキスパンションというんだよ」─男は娘に静かに言った。その時、背後から女性の声が飛んだ。
「あんた危ないよ。この橋はそこが開くんだから」。男は素直に立ち上がり、「橋が開くんですか。あなたも見ましたか」と聞いた。
「私は近所だから何十回も見てるよ。天に届くように橋が万歳するんだ。それは豪儀なもんだよ」
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