| 東京都の連続立体交差事業/道路ネットワーク形成を促進/都内326カ所の踏切を除去都内には、今なお約1130カ所の踏切があり、しかもこのうちの4分の1がいわゆる「開かずの踏切」である。これら踏切は、東京の最大の弱点である慢性的な交通渋滞に加え、市街地の分断など都市活力の低下を招く大きな要因となっている。また、地震時には列車の緊急停止等に伴い、幹線道路等の踏切が長時間にわたり閉鎖され、緊急・救急活動の妨げとなるなど深刻な影響を及ぼすことが懸念される。 連続立体交差事業は、これら課題を抱えた踏切を一挙に除却することにより、道路ネットワークの形成を促進するとともに、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化や防災性の向上にも資する極めて効果の高い事業である。 【地元区市や鉄道事業者との連携】 連続立体交差事業は、道路整備の一環として都が事業主体となり、地元区市、鉄道事業者と相互に連携し推進している都市計画事業である。 事業費については、国が定める連続立体交差化の要綱に基づき都市計画事業施行者と鉄道事業者の負担割合が定められている。このうち都市計画事業施行者が負担する費用は、都施行の場合、国の補助等を受けながら都が負担することになるが、鉄道の立体化や高架下の公共利用が図られることなど地元区市の受益も大きいことから、地方財政法に基づき、都が負担する費用の一部を地元区市が負担することとしている。 また、沿線まちづくりについては、地元区市が中心となり駅前広場や周辺の道路の整備などを一体的、総合的に進めており、本事業の効果を高めている。 さらに、鉄道事業者は本事業にあわせて駅舎やホームの改良、バリアフリー化などの利便性の向上、複々線化による輸送力の増強等に取り組んでいる。 【東京都の取り組みと事業の効果】 東京都では、これまでJR中央線など36カ所の事業により326カ所の踏切を除却してきた。現在7路線8カ所で事業を実施しており、今後80カ所の踏切を除却する予定である。これまで連続立体交差事業を積極的かつ着実に進めてきたことにより、ここ数年で次々と踏切の除却が実現し、交通渋滞の解消や駅周辺のまちづくりが促進されるなど、大きな効果が確認されている。 昨年9月には、京浜急行本線・空港線京急蒲田駅付近で環状第8号線付近を仮立体化し、4カ所の踏切を除却して環8の踏切で最大710メートルあった交通渋滞が解消した。11月には、JR中央線で三鷹駅・立川駅間の全区間の高架化が完了し、踏切の除却により道路交通が円滑化するとともに、沿線の消防署員に実施したアンケートからは、約8割が「目的地へ到着しやすくなった」と実感しているとの結果を得た。また、本年4月には、西武池袋線で石神井公園駅付近の下り線を高架化し、6カ所の踏切を除却して富士街道の踏切で最大500メートルあった交通渋滞が解消した。 新規事業化についても計画的かつ積極的に取り組んでおり、都施行の京王京王線笹塚駅・仙川駅間、西武新宿線の中井駅・野方駅間及び東村山駅付近、また、足立区施行の東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近について、事業化に向け都市計画等の手続きを進めている。
【安定した財源確保と一層の事業推進】 連続立体交差事業は、地元の期待も高く事業効果が大きい一方で、完成までに長い期間と多額の費用を要するため、事業を着実に推進する安定した財源の確保が不可欠である。 震災復興や昨今の社会経済情勢などから、公共事業費の確保が不透明な状況の中、東京都は引き続き必要な財源の確保に努め、地元区市や鉄道事業者と連携しながら連続立体交差事業を一層推進し、効率的で利便性が高く、高度に防災性を備えた都市の実現に取り組んでいく。
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