都政新報
 
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寄稿/率直な発言に強い発信力があった/元東京都副知事・明治大学名誉教授 青山やすし


  石原慎太郎元東京都知事の訃報に接して、残念でならない。自由な立場から闊達に国際情勢や国政、都政に対して元気のよい意見をもっともっと言ってほしかった。
 私は石原都政1期目の1999年から2003年までの4年間、副知事を務めさせていただいて、それは至福のひとときだった。当時、石原知事は東京や都政に対する思い入れがとても激しく、時に物議を醸すこともあったが、率直な発言には強い発信力があった。
 私は『太陽の季節』のときに少年だったから作家としての石原慎太郎作品をほとんど読んでいたが、その表現力や言葉の豊富さが都知事としての発言にも反映され、凝縮してほとばしっていて、とても頼もしく感じた。
 石原都政の1期目は特に東京の都市構造を大きく変えるときで、副都心政策から転換して東京全体のそして国際的規模、日本的規模で交通ネットワークを強化する時期だった。
 首都高中央環状線山手トンネル、羽田空港の4本目の滑走路建設と国際化、京急本線と羽田空港線の連続立体交差化など、大きなプロジェクトが石原都政1期目にスタートした。
 ディーゼルの排ガス規制は当初、実現困難と言われたが、ペットボトルにすすを詰めて振りかざすなど強烈なアピール力を示す一方、首都圏各自治体の協力も得て実現した。これは環境改善に資すると共に物流の確保に大いに貢献した。
 私たちはあの頃、世論調査をするよりも意見を石原知事にぶつけて知事の反応を見たほうが世論の動向がよく分かると言っていたくらい、石原知事は時代の流れをよく読んでいたと思う。その意味で石原知事は天才政治家だと思う。
 いま思い出すのは、会議が終わっても自ら先に席を立つことはせず、局長等が「知事、実はこういう問題がありまして……」などと発言をするのを待っていた石原知事の姿である。「俺は言論弾圧はしない」という言葉を私は何度か聞いた。「石原知事の副知事は大変だったでしょう」と言われることがある。石原知事は意見がはっきりしており、率直に物を言うので分かりやすい人である。だから副知事として仕えるのに大変ということはなかった。
 都議会の審議等のため、深夜まで都庁で待機するとき、私はよく石原さんの話を聞いていた。世界観、文明観から文学論あるいは生活実感まで、談論風発とは石原知事のためにある言葉だと思うくらい、その話は果てがなかった。私にとってあのときの問答は一生の宝物である。
 願わくは今後も天国から元気な意見をたくさん言ってほしい。
 

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